ルルレモン、ナイロン再生の「シンセティカ(Syntetica)」に出資:シリーズAで3,000万ドルを調達

lululemon syntetica series a

7月16日(現地時間)、フランスの素材リサイクル企業「シンセティカ(Syntetica)」は、シリーズAラウンドで3,000万ドルを調達したことを発表した。

今回のラウンドは、フランスの公的投資銀行ビーピーアイフランス(Bpifrance)が運営するエコテクノロジーズ2(Ecotechnologies 2)ファンドが主導。アクティブウェアブランド「ルルレモン(Lululemon)」や世界有数のアパレルメーカー、MASホールディングス(MAS Holdings)も出資に加わった。

Summary

  • ナイロンリサイクル企業のシンセティカが、シリーズAで3,000万ドルを調達
  • ルルレモンやMASホールディングスが出資し、ナイロン6とナイロン6,6を単一工程で再生する技術の工業化を支援
  • ミシュランと連携し、フランスに年間数百トン規模の商業実証施設を開発する計画

このほか、スウェン・キャピタル・パートナーズ(SWEN Capital Partners)、既存投資家のEQTベンチャーズ(EQT Ventures)、プジョー(Peugeot)やエタム(Etam)に関連するファミリーオフィスなどが参加。インドラマ・ベンチャーズ(Indorama Ventures)の主要株主に関連するファミリーオフィスも出資した。

シンセティカは、マルコ・ベルトーネ(Marco Bertone)とルイ・モンシニー(Louis Monsigny)が2023年に設立した企業である。2024年には、EQTベンチャーズが主導するシードラウンドで420万ユーロを調達していた。

合成繊維の循環を阻んできた「混合」の壁

衣料品に広く使われるナイロン6とナイロン6,6は、異なる化学構造を持つ。従来はそれぞれ別のリサイクル工程を必要としてきたため、複数のナイロンや他の繊維が混ざった使用済み衣料の処理は難しかった。

特にスポーツウェアやスイムウェア、アウトドア製品には、ナイロンだけでなく、エラスタン、ポリエステル、コットンなどが組み合わされているケースが多い。素材を正確に識別し、リサイクル前に分別する作業が、コストと処理能力の両面で大きな障壁となってきた。

シンセティカが開発したのは、ナイロンを分子レベルまで分解する独自の化学的解重合技術。ナイロンを多く含む混合繊維から、ナイロン6とナイロン6,6の両方を単一の工程で分離・回収できるという。

低温かつ加圧を必要としない工程を採用し、染料や仕上げ剤なども取り除く。回収された原料は、既存の製造サプライチェーンで使用できる、バージン素材と同等品質の再生ナイロンへと加工される。

テキスタイル・エクスチェンジ(Textile Exchange)によると、2024年の世界のナイロン生産量は約700万トンに達した。一方、再生ナイロンの市場シェアは約2%にとどまっており、化石燃料由来のバージンナイロンへの依存が続いている。

ミシュランと商業実証施設を開発

シンセティカは今回調達した資金を活用し、フランス初となる同社の商業実証施設を開発する計画だ。

施設は、フランス・クレルモン=フェランにあるミシュラン(Michelin)のセンター・フォー・サステナブル・マテリアルズ(Centre for Sustainable Materials)との連携を通じて整備される。研究室レベルにある技術を工業生産へ移行させ、年間数百トンの繊維廃棄物を処理できる体制の構築を目指す。

シンセティカは繊維や完成品そのものを製造するのではなく、リサイクル工程を通じて再生ナイロンのペレットを生産する。これを糸や生地に加工するメーカーへ供給し、既存のアパレル生産網に組み込む構想だ。

ベルトーネは、今回の資金調達について次のように述べた。

「何十年もの間、複数の種類が混在するナイロン廃棄物は、複雑すぎてコストも高く、大規模なリサイクルは不可能だと考えられてきました。私たちは、業界がこれまで再利用を諦めてきた廃棄物の流れから、価値の高い素材を回収できることを証明しました。今回の資金調達により、画期的な化学技術を産業レベルで実用化し、より循環型の素材への移行を加速させることができます。」

同社は現在、ヴィクトリアズ・シークレット(Victoria’s Secret)やエタムなど、複数のグローバルブランドとリサイクルプロジェクトを進めている。

ルルレモンが広げる次世代ナイロンへの投資

今回の出資は、ルルレモンが進めてきた素材イノベーション戦略の延長線上にある。

同社はこれまでにも、オーストラリアのサムサラ・エコ(Samsara Eco)と、使用済み衣料からナイロン6,6やポリエステルを再生する技術で協業。2025年には、再生原料の長期調達に向けた10年間の契約を発表した。

さらに、バイオテクノロジー企業のザイモケム(ZymoChem)とは、植物由来の原料を活用したナイロン6,6の商業化を進めている。

一つの技術に依存するのではなく、化学リサイクル、酵素リサイクル、バイオ由来素材を並行して支援するルルレモン。今回のシンセティカへの出資は、混合繊維を含む使用済み衣料という、これまで回収が難しかった廃棄物への対応力を広げる動きとなる。

繊維リサイクルを巡る競争は、実験室で技術の可能性を示す段階から、品質、価格、供給量をそろえて工業化する段階へと移りつつある。

ブランド、アパレルメーカー、素材企業、公的投資機関が同じプロジェクトに資金と知見を提供する今回のラウンド。循環型素材を限定的なプロジェクトで終わらせず、実際のサプライチェーンへ組み込むための新たなモデルとなりそうだ。

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