売上低迷からの回復を図る中、スポーツウェア大手の「ナイキ(Nike)」が、グローバル規模での人員削減と組織再編を加速させている。今回発表された削減規模は約1,400人にのぼり、その大半がテクノロジー部門に集中する見通しである。
Summary
- ナイキ(Nike)がグローバルで約1,400人の人員削減を発表、主にテクノロジー部門が対象
- 施策は「Win Now」戦略の一環で、オペレーションの簡素化と効率化を目的とする
- 製造拠点やサプライチェーンの再編、コンバース事業の一部移管も同時に進行
- 自動化と拠点集約により、スピードとコスト効率の改善を狙う構造改革
- 売上減速と中国市場の低迷を背景に、長期的な成長モデルの再構築を推進
今回の施策は、最高執行責任者ヴェンカテッシュ・アラギリサミー(Venkatesh Alagirisamy)が主導する「Win Now」戦略の次フェーズに位置付けられる。対象は北米、欧州、アジアにまたがるグローバルオペレーション部門であり、全従業員の2%未満に相当する規模となる。
アラギリサミーは社内メモの中で、今回の削減について「これらの取り組みにより、グローバルオペレーションにおいて約1,400のポジション削減が見込まれ、その大半はテクノロジー部門に集中します。今回の削減は、影響を受ける従業員だけでなく、その周囲のチームにとっても非常に厳しい決断です」と、述べている。
さらに「今後数カ月にわたり、グローバルオペレーションを進化させ、よりスピード、シンプルさ、精度をもってアスリートとビジネスに貢献していきます。これは新たな方向性ではなく、すでに進行中の取り組みの次フェーズでなのです」と付け加えた。
テクノロジー主導の再編と拠点集約
今回の構造改革の中核を担うのは、テクノロジー部門の再編である。ナイキは近年、最高技術責任者ポジションの廃止を含む組織見直しを進めており、現在は同部門をオペレーション部門の下に統合。組織のスリム化と意思決定の迅速化を狙う。
同時に進むのがリソースの再配置だ。開発・技術機能は主要拠点へと集約されつつあり、テクノロジー導入のスピード向上とコスト効率の改善を両立させる構えである。
製造とサプライチェーンの再構築
変革の波は製造領域にも及ぶ。ナイキは「Air Manufacturing Innovation」施設における人員配置の見直しとプロセス効率化を推進。加えて、コンバース(Converse)のフットウェア製造およびエンジニアリング機能の一部を、工場パートナーに近接する形で再配置する方針を示している。
さらに、素材調達機能をフットウェアおよびアパレルのサプライチェーンチームへ統合。分散していた機能を一本化することで、より機動的で一体化されたオペレーション体制の構築を図る。狙いは、サプライチェーン全体のスピードと柔軟性の引き上げにある。
自動化と効率化による「複雑性の排除」
背景にあるのは、肥大化した組織構造への問題意識だ。ナイキは、自動化の導入と業務プロセスの簡素化を通じて、より俊敏に意思決定できる体制への転換を進めている。
アラギリサミーは、「これらの変革は、企業の複雑性を低減し、より迅速に対応できる体制を構築するためのものです。オペレーションを簡素化し、先進的な自動化を取り入れ、将来の成長に向けた強固な基盤を構築していきます」とも述べている。
売上減速と中国市場の不透明感
とりわけ、これまで成長を牽引してきた中国市場の減速は深刻とされ、当四半期には約20%の減収が見込まれている。
一方で、個別商品では一定の成果も見られる。ランニングシューズ「ヴォメロ18」は発売から3カ月で1億ドル規模の売上を記録。だが、全体のトレンドを押し上げるまでには至っていないのが実情である。
ナイキは今年1月、米国の物流拠点再編に伴い約700人規模の削減を実施している。それ以前にも複数回にわたる組織調整を重ねてきた。
同様の動きは業界全体にも広がりつつある。ドイツのスポーツウェア大手「プーマ(Puma)」では、昨年10月時点で2026年末までに世界で約900人の企業部門スタッフを削減する方針が示されている。新CEOアルトゥール・ホルド(Arthur Hoeld)のもとで進む抜本的な構造改革の一環であり、売上減速とブランド勢いの鈍化に対応するための施策である。
こうした流れが示すのは、業界全体で進行する構造転換だ。単なるコスト削減にとどまらず、テクノロジー、製造、サプライチェーンを横断したオペレーティングモデルの再設計が求められている。
ナイキが目指すのもまた、よりシンプルで俊敏な組織への転換である。
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