LVMHとIFM、創造性を科学する「サイエンス&クリエーション」研究講座を設立

LVMH

7月13日(現地時間)、ラグジュアリーグループの「LVMH モエ ヘネシー・ルイ ヴィトン(LVMH Moët Hennessy Louis Vuitton)」と、フランス国立ファッション学院(Institut Français de la Mode、以下IFM)は、新たな学術連携プロジェクト「サイエンス&クリエーション(Sciences & Creation)」研究講座の設立を発表した。

創造性が生まれるメカニズムと、人工知能をはじめとする新たなテクノロジーがクリエイティブ産業にもたらす変化を、科学的な視点から研究する取り組みだ。

Summary

  • LVMHとフランス国立ファッション学院が、「サイエンス&クリエーション」研究講座を設立
  • 認知科学、計算科学、社会科学などを通じ、創造性のメカニズムや人間とAIの協働を研究
  • 年間15万ユーロの基金を設け、クリエイターの実践や新たな技術の影響に関する基礎研究を支援
  • 研究の柱は「創造と認知」「創造のコンピュテーショナルモデル」「創造の社会科学と人類学」の3領域
  • 講義やワークショップ、ビジネスケースを通じ、研究、教育、LVMH傘下メゾンの実務を結びつける

 

ファッション、ラグジュアリー、人文科学、認知科学、先端テクノロジーが交差する領域に位置する同研究講座。創造的プロセスに関する新たな知見を生み出し、IFMの教育プログラムを充実させるとともに、研究、人材、LVMH傘下メゾンの結びつきを強化することを目的としている。

LVMHはこれまでにも、グループのメゾンの未来を形づくる分野において、知識の継承やイノベーションを支援するため、世界を代表する教育・研究機関との学術連携を進めてきた。こうした取り組みを通じて、新たな知識の創出や、研究者と産業界の対話を促進。ファッションとラグジュアリーの未来を担う人材の発掘、育成、支援にも力を入れている。

創造性を3つの領域から研究

「サイエンス&クリエーション」研究講座は、認知科学、計算科学、社会科学、先端テクノロジーなど、多様な学問領域を横断しながら現代の創造的プロセスを研究するものだ。研究の柱となるのは、「創造と認知」「創造のコンピュテーショナルモデル」「創造の社会科学と人類学」の3領域である。

「創造と認知」では、創造的プロセスにおいて働く精神的、知覚的、身体動作的なメカニズムを研究する。直感、専門性、インスピレーションが、どのような条件のもとで生まれるのかを探る領域だ。

「創造のコンピュテーショナルモデル」では、現代の創作活動における人工知能システムや生成ツールの役割を検証する。人間と機械による新たな協働の可能性も研究対象となる。

「創造の社会科学と人類学」が扱うのは、創造が持つ文化的、集団的、象徴的、社会的な側面だ。才能の出現や美的イノベーションの評価を促す環境、ネットワーク、社会的背景を分析する。

インスピレーションが生まれる仕組みから、人間と機械の相互作用、創造を取り巻く文化やコミュニティまで。アイデアや才能、創造的イノベーションが育まれる条件を、多角的に読み解く試みである。

研究講座には年間15万ユーロの基金が設けられ、クリエイターの実践、新たな技術が与える影響、才能の成長を支える環境などに関する基礎研究に充てられる。

研究を教育とメゾンの現場へ

研究成果は学術領域にとどまらず、IFMの教育プログラムやLVMH傘下メゾンの実務にもつなげられる。講義、ワークショップ、支援プログラム、ビジネスケース、学術論文、カンファレンスなどを組み合わせたプログラムを展開する予定だ。

対象となるのは、IFMの各教育課程に在籍する学生。約80〜90人が参加するマネジメント分野の専門修士課程、マネジメントとクリエーションを学ぶ修士課程の学生30〜40人を対象とした分野横断型の選択科目、さらに2〜6人のデザイン学生を対象とするワークショップおよび支援プログラムが設けられる。

学生とLVMHグループおよび各メゾンのチームが交流する「INSIDE LVMH Days」も、業界への理解を深める重要な機会となる。

一部の取り組みでは、各メゾンが教育プロジェクトやビジネスケースに参加する可能性もある。学生が実際の課題に向き合う一方、メゾンのチームもIFMの学術的かつクリエイティブな視点を取り入れ、自らの考察を深めていく。

LVMHの最高人事責任者を務めるモード・アルバレス=ペレール(Maud Alvarez-Pereyre)は、研究講座の目的について、次のように説明した。

「創造性のメカニズムをより深く理解することは、クリエイティブ産業の変革を支援するうえで欠かせない課題となっています。知識は、インスピレーション、イノベーション、そして専門技術の継承に不可欠です。科学、学術的な卓越性、そして各メゾンが持つサヴォアフェールの対話によって、新たな可能性を切り開くことができると確信しています。『サイエンス&クリエーション』研究講座を通じて、私たちは未来の重要な課題を明らかにするだけでなく、ファッションとラグジュアリーの未来を担う人材を発掘し、支援し、育成することを目指します」

科学とテクノロジーから創造の未来を探る

IFMの理事長であるシドニー・トレダノ(Sidney Toledano)は、創造がファッションとラグジュアリーの中心にあるとしたうえで、科学や人工知能を研究に取り入れる意義を強調する。

「創造は、ファッションとラグジュアリーの根幹にあります。LVMHとともに設立する『サイエンス&クリエーション』研究講座を通じて、創造性のメカニズムを理解するための研究と知識継承の場を切り開きたいと考えています。科学、先端テクノロジー、人工知能がどのように貢献できるかを探究することは、卓越性、文化、創造性という私たちのクリエイティブ産業を唯一無二のものにしている要素を守りながら、その未来に備えることにつながります」

人工知能や生成ツールがクリエイティブ産業に広がるなか、その技術をどのように取り入れ、人間の創造性と共存させるかは、ファッション業界における重要なテーマとなっている。今回の研究講座では、テクノロジーの機能や効率だけでなく、人間の認知、知覚、身体的な動き、文化、社会環境との関係も含めて研究する。

創造性を機械に委ねるのではなく、科学や先端技術が人間の才能をどのように支援できるかを探ること。LVMHとIFMによる「サイエンス&クリエーション」研究講座は、研究、教育、産業界を結びながら、ファッションとラグジュアリーにおける創造の未来を考察する場となる。

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