イタリアのラグジュアリーメゾンである「グッチ(Gucci)」は、4月27日(現地時間)より、フィレンツェの歴史的建造物パラッツォ グッチにおいて、新たなエキシビション「Gucci Storia」を一般公開した。同展は、ブランドの歴史と未来を横断的に再解釈する空間として構想されており、「美術館の中の美術館」というコンセプトのもと、複数の展示室を通じて多層的な体験を提供するものだ。
会場となるパラッツォ グッチは、シニョーリア広場に面するメルカンツィア宮殿内に位置し、1337年に建てられた歴史的建築である。展示はファーストフロア(2階)とセカンドフロア(3階)にわたって展開され、グラウンドフロアにはショップおよびレストラン「Gucci Osteria da Massimo Bottura」、さらにカフェ&バー「Gucci Giardino」が併設されている。
空間を巡ることで立ち上がるブランドの物語
同展示は「美術館の中の美術館」というコンセプトのもと、複数の展示室が連なり、一つの流れをつくる。来場者は空間を移動しながら、グッチの多面的なアイデンティティを体験する。
「The Thread of Time」では、タペストリーを通じてブランドの歴史を視覚化。創業者グッチオ・グッチ(Guccio Gucci)から歴代クリエイティブ・ディレクター、そしてデムナ(Demna)へと続く流れが描かれる。
また、「La Galleria」では、写真家キャサリン・オピー(Catherine Opie)によるポートレートを展示。血縁を超えた“家族”という視点から、ブランドの価値観を表現する。


アーカイブと映像が交差する展示
展示の中盤では、アーカイブとイメージ表現が重なり合う。「Archivio」では、バッグやスカーフといったプロダクトが引き出しの中に収められ、標本のように提示される。あえて秩序を排した配置によって、グッチの創造の広がりと偶発性が浮かび上がる。

「The Cinema」では、深い赤に包まれた空間の中で、コレクション映像やショートフィルムが上映されている。視覚と空間が一体となり、デムナのヴィジョンを感覚的に伝える演出だ。
さらに「Generation Gucci」では、広告キャンペーンのビジュアルを大型インスタレーションとして展開。過去・現在・未来が交差しながら、ブランドのコードが一つの物語として再編される。


クラフツマンシップと革新の交点
展示の核となる「La Manifattura」では、グッチのものづくりの本質が時間軸を横断して提示される。前半では、グッチ バンブー 1947、グッチ ジャッキー 1961、グッチ ホースビット 1955といった象徴的なアイテムが並び、職人技の蓄積を可視化する。一方、後半では「Gucci ArtLab」を想起させる環境の中で、素材の耐久性や構造を検証する技術が紹介されている。
過去と現在は断絶するものではなく、連続するものとして、グッチにおける創造がどのように更新され続けているのか、そのプロセスを体感出来る空間である。
神話と記憶を辿る体験
セカンドフロアでは、より抽象度の高いテーマへと移行する。
「La Materia」では、空間に浮かぶように配置されたマネキンによってウェアの歴史が語られる。視線の高さに合わせた展示により、ディテールの美しさが際立つ。

「La Stanza della Verita」では、ブランドにまつわる神話や逸話に光を当てる。かつてニューヨークに存在した招待制空間「Galleria Gucci」を想起させる演出の中で、語られた歴史だけでなく、語られなかった記憶や噂といった側面が浮かび上がる。
そして最後の「L’Oracolo」では、インタラクティブなインスタレーションが来場者に問いを投げかけ、ブランドと個人の関係性に思索を促す締めくくりとなる。



「Gucci Storia」が提示するのは、固定された歴史ではなく、再編集され続けるブランドの物語である。フィレンツェという場所と重なりながら、その物語は今も更新され続けている。同展は、その現在進行形のプロセスに触れる機会といえる。
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