5月7日(現地時間)、「コーチ(Coach)」や「ケイト スペード ニューヨーク(Kate Spade New York)」を擁する米ラグジュアリーグループ、タペストリー・インク(Tapestry, Inc.)が、2026年度第3四半期決算を発表した。収益は前年同期比21%増の19億ドルとなり、営業利益率およびEPSも市場予想を上回る成長を記録。特にコーチ事業の好調が全体を牽引し、北米、中国を含む主要市場で2桁成長を達成した。
同社はこれを受け、2026年度通期の収益、営業利益率、EPS、キャッシュフロー見通しを上方修正している。
Summary
- タペストリー・インクの2026年度第3四半期収益は前年同期比21%増の19億ドル
- 「コーチ」事業は31%増収となり、北米・中国を含む主要市場で2桁成長を達成
- 「タビー」シリーズやSNS戦略がZ世代顧客獲得を後押し
- 営業利益率はGAAPベースで630ベーシスポイント改善、EPSは74%増の1.65ドル
- AI活用やD2C強化を進め、“現代型ラグジュアリー企業”への変革を加速
- 2026年度通期ガイダンスを上方修正し、継続的成長への自信を示した
コーチ事業が牽引、主要市場で高成長
タペストリー社の第3四半期における純売上高は19億2,000万ドルとなり、恒常通貨ベースで19%増加した。特にコーチは恒常通貨ベースで29%成長し、ハンドバッグカテゴリーの需要拡大が業績を押し上げた。販売数量は20%超増加し、平均小売単価も10%台前半の上昇を記録している。
地域別では、北米が20%増、ヨーロッパが21%増、中国市場を含むAPAC地域全体では30%増と、主要市場で力強い成長を実現。デジタルチャネルも約25%増と好調に推移し、グローバル店舗売上も20%超成長した。
今回の成長を牽引した背景には、若年層を中心に人気を集める「タビー(Tabby)」や「ブルックリン(Brooklyn)」シリーズの存在もある。近年のコーチは、TikTokやPinterestなどソーシャルプラットフォーム上での露出を強化し、ジェネレーションZを中心とした新たな顧客層の獲得を加速させてきた。
さらに、ブランドキャンペーンやインフルエンサーマーケティングへの投資も積極化。マーケティング投資を拡大しながらも収益性を向上させている点は、現在のコーチのブランド力を象徴する動きと言える。


利益率改善とキャッシュ創出力が鮮明に
売上総利益率は76.9%となり、前年同期比で80ベーシスポイント改善。販管費率も低下し、営業利益率はGAAPベースで22.3%、非GAAPベースで22.4%に拡大した。
純利益はGAAPベースで3億4,400万ドル、希薄化後1株当たり利益(EPS)は1.65ドルとなり、前年同期比74%増を達成。非GAAPベースでも1.66ドルとなり、62%増加した。
また、営業活動によるキャッシュフローは2億6,300万ドル、年初来ベースでは14億6,000万ドルの流入となり、堅調なキャッシュ創出力も示している。
ケイト スペード ニューヨークはブランド再構築を推進
一方で、「ケイト スペード ニューヨーク(Kate Spade New York)」は引き続き調整局面にある。同ブランドは短期的な値引き依存から脱却し、フルプライス販売の強化やブランドポジショニング再構築を進めているようだ。
タペストリーは近年、ブランドイメージ刷新や商品戦略見直しを進行し、短期的な売上よりも、中長期的なブランド価値向上を優先している姿勢がうかがえる。
Z世代顧客の獲得が成長を後押し
同社は当四半期中に240万人を超える新規顧客を獲得し、そのうち35%超をZ世代が占めた。若年層の流入拡大は、ブランドの長期的な競争力を示す重要な指標となっている。
また、タペストリーは「Amplify」戦略のもと、「消費者とのエモーショナルなつながり」「製品の卓越性」「グローバル成長」「人材強化」の4つを成長の柱として推進している。
さらに同社は、「コーチ」および「ケイト スペード ニューヨーク」においてAI技術の活用も進めている。デザインそのものは従来通りクリエイティブ主導で行いながら、カラー展開や商品開発プロセス、サプライチェーン最適化などにAIを導入。開発スピードと業務効率の向上につなげている。
タペストリー社の最高経営責任者であるジョアン・クレヴォイセラ(Joanne Crevoiserat)は、今回の決算について次のように述べている。
「第3四半期の好業績は、世界中のより多くのお客様にクリエイティビティー、クラフトマンシップ、価値をもたらす当社のAmplify戦略による複合的なメリットが寄与したものです。規律ある戦略遂行と徹底した顧客中心主義により、あらゆる知見を大規模な行動へと昇華させ、有意義な成長を促進し、利益率を拡大し、ブランドへの尽きることのない憧れを醸成しています。この優位な位置づけを活かして、大きな可能性に満ちた未来へと確かな歩みを進めています。2026年度通期業績見通しを引き上げるとともに、私たちはタペストリー・インクの持つ力、盤石な成長と長期的な株主価値の創出に向けた当社の揺るぎない決意を示しています。」
通期見通しを上方修正
同社は2026年度通期見通しも引き上げた。収益見通しは79億5,000万ドル前後へ引き上げられ、前年同期比約14%増を見込む。EPS見通しも従来の6.40〜6.45ドルから、6.95ドル前後へと上方修正された。
加えて、2026年度中の株主還元総額は16億ドルへ拡大。配当と自社株買いを通じて積極的な還元を継続する方針を示している。
今回の決算で特に注目すべきは、「コーチ」の人気が若年層を中心にグローバルで再加速していることだ。しかし、この成長は単発的な四半期要因ではない。実際、タペストリーはここ数四半期にわたり、継続的にコーチ主導の成長を記録している。
前四半期となる2026年度第2四半期でも、コーチの売上高は25%増を記録。さらに2025年度通期においても、コーチは2桁成長を維持し、中国市場や北米市場で存在感を拡大してきた。
近年のコーチは、価格帯・クラフトマンシップ・トレンド感のバランスを武器に、“アクセシブル・ラグジュアリー”市場で独自のポジションを確立。特に「タビー」シリーズをはじめとするアイコンバッグ戦略や、TikTok・Pinterestを活用したSNS時代型マーケティングが、Z世代を中心とした新規顧客獲得につながっている。
また、中国市場の回復に加え、北米でも継続的に2桁成長を維持していることは、ブランドが一時的なバズではなく、長期的なブランドへの憧れやロイヤルティを構築できていることを示唆している。
同時に、AI活用やD2C強化、データドリブンな商品戦略などを進めることで、タペストリーは“現代型ラグジュアリー企業”としての変革を加速させている。実際、同社は2025年のInvestor Dayにおいて、「コーチ」を将来的に100億ドルブランドへ成長させる目標も掲げている。
ラグジュアリー業界全体で消費減速への警戒感が続く中、タペストリーの今回の業績は、単なる短期的回復ではなく、ブランド戦略・顧客理解・マーケティング投資を積み重ねてきた結果としての“継続的成長”であることを示した決算だった。
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