7月9日(現地時間)、ドバイを拠点に活動するシリア出身のクチュリエ、ラミ アル アリ(Rami Al Ali)は、2026-27年秋冬オートクチュールコレクション「Threads of Light: A New Dawn(光の糸:新たな夜明け)」を発表した。
「不確かな時代にあっても、美しさ、記憶、帰属意識、そして私たちを前へと導く光は残り続ける」。国境や世代を超えて人々を結んできた普遍的な価値への眼差しを起点に、ラミ アル アリは、夜明けを再生と希望の象徴として描き出した。
砂漠の地平線が温かな光に染まり、湾岸の水面が一日の最初の輝きを捉える。暗闇から光へと移ろう束の間の情景を、建築的なシルエット、精緻な刺繍、光を反射する素材によって表現し、アラブ世界に受け継がれてきた文化的な記憶を現代のクチュールへと昇華している。
コレクション全体を包むのは、力強さを誇示するのではなく、光が少しずつ世界を満たしていくような静かな楽観である。困難のなかにあっても、美しさと希望は失われないという確信が、一着一着に穏やかに織り込まれた。

Courtesy of Rami Al Ali
Summary
- ラミ アル アリが、2026-27年秋冬オートクチュール「Threads of Light: A New Dawn」を発表
- 砂漠と湾岸地域を照らす夜明けの光から着想し、再生、希望、連続性を表現
- アラブ世界に受け継がれてきた職人技や建築、交易、移住、詩、音楽、集合的記憶を着想源とする
- 建築的な構築美と流動的なドレープ、精緻な刺繍、光を反射する素材が共存
- サンド、アイボリー、シャンパン、ゴールドを中心に、ブラックやグレーが緊張感を添える
アラブ世界を結ぶ、目に見えない糸
コレクションは、湾岸地域からシリア、そしてその先へと広がる、アラブ世界の共有された文化的遺産にも目を向ける。
職人技や建築、交易、移住、詩、音楽、集合的記憶。異なる土地と時代を行き交いながら受け継がれてきた要素を、ラミ アル アリは人々を結びつける「目に見えない糸」として捉えた。
その糸は、精緻な刺繍や装飾となってドレスの上に姿を現す。身体の曲線に沿って走るビーズやメタリックなモチーフは、まるで世代から世代へと手渡されてきた物語の断片のようだ。
また、ゴールドの装飾が有機的な曲線を描くドレスや、アイボリーの生地に繊細な刺繍を重ねたルックには、文化の記憶を保存するだけでなく、新たな形で未来へ送り出そうとする意志が表れていた。


建築的な構築美と、動きのある軽やかさ
シルエットは、建築的な精度と身体の動きに寄り添う流動性のあいだを行き来する。
立体的に組み上げられたパネル、鋭く立ち上がるショルダー、ウエストを囲む彫刻的なフォルム。一方で、柔らかなドレープやプリーツ、軽やかに揺れるケープが、構築的な輪郭に動きと余韻を与えている。
幾何学的なパーツを重ねたホワイトドレスや、身体を包みながら床へと流れるゴールドのケープドレスでは、衣服が平面的な装飾ではなく、一つの建築物のように構成されている。
対照的に、シフォンやチュールを用いたドレスは空気を含むように揺れ、重厚な刺繍と透ける素材のあいだに繊細な緊張を生み出した。構築とドレープは互いに競い合うのではなく、呼応しながら一つのシルエットを完成させている。


光をまとうための素材と装飾
コレクションにおいて、光は単なる着想源ではない。素材そのものとして、ドレスの表面に織り込まれている。
ビーズやスパンコール、メタリックな刺繍、光沢を帯びた織物が、モデルの動きに合わせて異なる表情を見せる。細かな装飾が連なるルックでは、光が点となって瞬き、プリーツやドレープを用いたドレスでは、面としてゆっくりと流れていく。
とりわけ、ゴールドの装飾を大胆に重ねたシースドレスや、シャンパンカラーの素材を放射状にドレープしたルックは、朝日が水面や建築物に反射する瞬間を思わせる。
一方、ブラックのドレスは夜明け前の闇を想起させる。透けるチュールや光沢のある刺繍によって、黒は完全な暗闇としてではなく、その内側に光を宿す色として表現された。

夜明けの移ろいを映すカラーパレット
色彩は、柔らかなサンドや温かなアイボリーから始まり、シャンパン、アンバー、ゴールド、繊細なメタリックへと移ろう。
クリームやオフホワイトを基調としたドレスは、朝の最初の光に包まれた静けさを映し出す。そこへゴールドやシルバーの反射が加わり、時間とともに明るさを増していく地平線の変化を描いた。
実際のルックでは、コレクションの中心となる淡い色彩に加え、ブラックや冷ややかなグレーも登場する。光と影、温もりと静寂という対比が生まれることで、夜明けというテーマがより立体的に浮かび上がった。

伝統を保存するのではなく、未来へつなぐ
コレクションの核心にあるのは、伝統と現代性の対話である。
ラミ アル アリは、アラブ世界に根づく職人技や装飾文化を過去のものとして保存するのではなく、現代的なカッティングや構築技術と組み合わせ、新しいクチュールの言語として提示した。
一着一着が、過去と未来、記憶と想像、場所とアイデンティティを結ぶ存在となる。文化的な背景を明確に持ちながらも、特定の時代や地域に閉じることなく、国境を越えて共有できる美しさへと開かれている。
フィナーレに姿を現したのは、細身のシルエットに長いトレーンを備えたホワイトのブライダルルックだ。身体を包む繊細な刺繍と、後方へ広がる透明感のあるヴェールが、コレクションを貫いてきた光の糸を一つに束ねる。
夜明けが新しい一日の始まりを告げるように、花嫁は記憶を受け継ぎながら未来へと歩み出す。「Threads of Light: A New Dawn」は、クチュールの技術を通じて、希望とは大きな宣言ではなく、暗闇の先に差し込む一筋の光から始まることを静かに伝えている。
ラミ・アル・アリ2026-27年秋冬オートクチュールコレクションの全ルックは、以下のギャラリーから。
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