7月8日(現地時間)、オランダ発のアヴァンギャルドなメゾン「ヴィクター&ロルフ(VIKTOR&ROLF)」は、パリ・オートクチュールウィークで2026-27年秋冬オートクチュールコレクション「Gilded Age 2.0」を発表した。
ゆっくりと回転する舞台に現れたのは、二つのベッドと衣装ラックを配した、左右対称のベッドルーム。そこで2人の女性が鏡に映したように動きを重ね、服を着ては脱ぎ、また次の一着へと移っていく。
同じシルエットをまといながら、一方は眩いゴールド、もう一方は粗いバーラップやジュート。その鮮やかなコントラストを通して、デザイナーのヴィクター・ホルスティンとロルフ・スノーレンは「退廃(decadence)」と「抑制(restraint)」を描き出した。


Courtesy of Viktor&Rolf
Summary
- ヴィクター&ロルフが「Gilded Age 2.0」をパリで発表
- 同じシルエットを、ゴールドとバーラップやジュートの二つの素材で表現
- ベッドルームを模した舞台で、2人の女性が同期しながら着脱を繰り返した
- バスローブ、ベッドカバー、ナイトガウン、掛け布団をクチュールへと転換
- フィナーレでは「restraint」と「decadence」の文字を袖に掲げたコートが登場
- シューズはクリスチャン ルブタン、帽子はスティーブン ジョーンズが手がけた
同じ形、異なる表情
「Gilded Age 2.0」というタイトルが指すのは、富やスペクタクル、可視性が大きな力を持つ現代の“新たな金ぴか時代”だ。
コレクションは、24のルックを12組のペアとして構成。同一のシルエットを、天然素材の素朴な表情と、ゴールドやクリスタルに覆われた豪華な表情で見せていく。
形が同じだからこそ、素材の違いが際立つ。ゴールドは富や欲望、過剰な装飾を映し、バーラップやジュートは労働、規律、そして華やかな世界を背後で支える構造を思わせた。
どちらか一方を選ぶのではなく、両者を並べることで初めて見えてくるものがある。それが今季の出発点となった。


バスローブから始まる二重奏
ファーストルックは、長い袖とウエストベルトを備えたショート丈のバスローブ。
生成りのコットンに開織りのジュートを合わせた一着に続き、同じ形がゴールドラミネートのフローラルレースで再び姿を現す。
バイアス裁ちのミニドレスも同様だ。ジュートのドレスは切りっぱなしの縁と編み込んだ細いストラップが素材の荒々しさを伝え、対となるゴールドレースのドレスには、クリスタル、ビーズ、スパンコールが繊細な光を添えた。
デザインはほぼ変わらない。それでも、片方は控えめなスリップドレスに、もう片方は夜のための華やかなミニドレスに映る。表面を変えるだけで、服に向けられる視線も、その価値さえも変化していく。


ベッドルームからボールルームへ
今季のワードローブを形づくったのは、バスローブやナイトガウン、ベッドカバー、掛け布団といった寝室のアイテムだった。
コットンとリネンを組み合わせたベッドカバーは、オーバーサイズの襟と床を引くトレーンを備えたコートへ。同じデザインをゴールドシルクとルレックスで仕立てると、親密な寝具が一転して、舞台の主役となるイブニングコートへと変わった。
ゆったりと広がるナイトガウンは、粗織りのジュートと、きらめくオーガンザの二つの姿で登場。肩を包む大きなフリルが、リラックスしたフォルムにクチュールらしいドラマを加える。
掛け布団には腕を通すスリットを入れ、ケープのように着用した。ナチュラルリネンには小さな手編みの花を、メタリックなルレックス・クロッケにはクリスタルボタンを施す。眠る身体を包むための布が、今度は人前に立つ身体を飾っていった。




素材を超えて響き合うシルエット
中盤からは、ヴィクター&ロルフを象徴するボウやフリル、誇張されたボリュームが次々と現れる。
バックのボックスプリーツが横顔を彫刻的に見せるスカートスーツ。袖そのものが巨大なボウとなり、首元を包み込むミニコート。そして、深いVネックと幾重ものフリルを備えたボールガウン。
グレイッシュなリネンで仕立てたガウンと、ルレックスを織り込んだオーガンザのガウンは、片側を切り取ったようなデザインになっている。2人が並ぶと、分かれていたドレスが一つのシルエットへとつながり、舞台上に左右対称の像が完成した。
素材の印象は正反対でも、服を支える技術に差はない。粗いジュートにも、光を放つゴールドにも、同じパターンと構築、そしてクチュールの手仕事が注ぎ込まれている。


薔薇が咲くフィナーレ
終盤には、立体的な薔薇と花びらがドレスの表面を覆い始めた。
ナチュラルなジュートのコートでは、ボディスに立体的な薔薇が咲き、スカートを覆う花びらは裾へ向かうほど大きくなる。そのゴールド版は、異なるメタリック素材をパッチワークし、ラインストーンやクリスタルのボウを重ねた、より幻想的な仕上がりだ。
そして最後の2着で、それまで服が語ってきたテーマが文字となって現れる。
3種類のジュートを織り合わせたコートの袖には「restraint」。クリスタルを敷き詰めたゴールドのコートには「decadence」。いずれもフィットしたボディスと大きく広がるスカートを持ち、小さなボウが表面に織り込まれている。
シューズはクリスチャン ルブタン(Christian Louboutin)、帽子はスティーブン ジョーンズ(Stephen Jones)が担当した。


輝きの下にあるもの
ゴールドとバーラップ。過剰と節制。華やかな表舞台と、それを支える見えない労働。
ヴィクター&ロルフは、それらを単純な対立として扱わなかった。同じシルエットを二度見せることで、ラグジュアリーには装飾と同じだけ、規律や構造が欠かせないことを示している。
ゴールドの下にも、ジュートの下にも、存在するのは同じ身体だ。人は装うことで自分を表現し、ときには守り、あるいは別の自分を演じる。それでも、幾重もの表面を取り去った先に残る人間の脆さは変わらない。
現代の“金ぴか時代”において、本当に価値のあるものとは何なのか。「Gilded Age 2.0」は、ヴィクター&ロルフらしいユーモアと明快な仕掛けによって、その問いを静かに投げかけた。
ヴィクター&ロルフ2026-27年秋冬オートクチュールコレクションの全ルックは、以下のギャラリーから。
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