7月8日(現地時間)、パリのオートクチュールメゾン「フランク・ソルビエ(FRANCK SORBIER)」は、2026-27年秋冬オートクチュールコレクション「Le Parfum des Globe-trotteuses(世界を旅する女たちの香り)」を発表した。
今季、フランク・ソルビエが描いたのは、20世紀の幕開けを起点に世界各地を巡る、自由で大胆な女性旅行者たちだ。旅先で出会った文化、香り、布、装身具、そして記憶。それらを一着の服のなかに重ねながら、異国への尽きることのない憧れと、女性の解放をクチュールとして表現した。

Courtesy of Franck Sorbier
Summary
- フランク・ソルビエが、2026-27年秋冬オートクチュール「Le Parfum des Globe-trotteuses」を発表
- 1900年のパリ万国博覧会と、同年に開業したオテル・レジーナから始まる時空を超えた旅
- 反骨のアリストクラット、作家、詩人、ダンサー、二重スパイなど、自由に生きた女性たちへのオマージュ
- アンティークの着物刺繍やウズベクのイカット、ペルシアやムガル美術を思わせるパルメット文様を採用
- パンツを女性解放と移動の自由の象徴として取り入れ、赤、黒、白、金、銀のコントラストで構成
20世紀の幕開けから始まる旅
コレクションのタイムマシンが降り立つのは、20世紀の幕開けを迎えたパリだ。
1900年のパリ万国博覧会では、エッフェル塔を中心に世界各国のパヴィリオンが並び、それぞれの文化と創造性、技術を競い合っていた。同じ年、パリのリヴォリ通りにはオテル・レジーナが開業する。
その扉から現れるのが、ソルビエの想像するグローブトロッターたちだ。反骨精神を持つアリストクラット、情熱的な作家、華やかなレヴューの花形、詩人、悲劇的な二重スパイ、そして時代を先取りするダンサー。社会の規範に縛られることなく、新たな文化や感覚を求めて世界を旅する女性たちである。
彼女たちの人生は、マルコ・ポーロの『東方見聞録』や、ジュール・ヴェルヌの冒険小説にも重なる。大西洋を渡る豪華客船、ヨーロッパからイスタンブールへ向かうオリエント急行、中央アジアを横断するシルクロード。海を越え、空を翔け、ラクダの背に揺られながら、まだ見ぬ世界へと進んでいく。

異郷で出会った文化と記憶
旅人たちは、アルマトイやタシケント、サマルカンド、ブハラを巡り、チベット、ネパール、ブータンの修道院で暮らす女性たちと時を過ごす。インドではアシュラムに滞在し、ジャンク船の甲板からベトナムのハロン湾を眺める。
人力車や輿、トゥクトゥクを乗り継ぐその生活は、時に贅沢で、時に大胆。しかし常に、未知の世界と出会う高揚感に満ちている。
彼女たちは旅人であると同時に、蒐集家でもある。アボリジニやパプアの美術、クスコの絵画、ナバホやホピの装身具、ベナンやイヌイットの仮面。異なる土地で手にした品々は、単なる土産ではなく、その場所で過ごした時間や人々との出会いを伝える記憶の断片だ。
舞台となったオテル・レジーナは、1919年に赤十字・赤新月社国際連盟が創設された場所でもある。国境を越えて人々を結ぶ「普遍性」という理念は、異文化への敬意を軸とする今季のコレクションにも静かに流れている。

女性の解放を象徴するパンツ
コレクションを通して繰り返し登場するのが、パンツルックだ。
ここでパンツは、単なるシルエットの選択ではない。女性が新たな社会的地位を獲得し、自らの意志で移動し、生きるための自由を象徴している。
パンツには、オスマンや日本の衣服、ガウンやローブを思わせる、ゆったりとしたコートが重ねられた。身体を包み込むそのフォルムには、長い旅のなかで出会った衣服や文化の記憶が映し出されている。
一方で、構築的なジャケットやシガレットパンツ、ジョッパーズ、ズアーブパンツなど、異なる地域や時代を想起させるシルエットも交差する。ソルビエはそれらを歴史的な引用として再現するのではなく、現代の女性が自由に纏うためのワードローブへと再構築した。

世界から持ち帰った布
旅の記憶を最も雄弁に物語るのが、コレクションに用いられた多彩なテキスタイルである。
アンティークの留袖に施された刺繍は、リトルブラックドレスに新たな生命を吹き込み、ウズベクのイカットを思わせる装飾は、深い赤のベルベットコートに異国的なリズムを加える。
マーブル紙や装丁紙の模様を思わせる立体的なジャカードは、抑制されたシルエットに奥行きをもたらした。巨大、あるいは極小のパルメット文様は、カージャール朝ペルシアの装飾美術や、インドのムガル細密画を連想させる。
日本趣味を感じさせるシルクジャカードのパッチワーク、鉱物の表面のようなブルーとゴールドの織り、黒いラフィアの花、鳥や植物を描いた刺繍。異なる土地から集められたイメージは、ソルビエの手によって一つの視覚言語へと結び直されている。

動物の気配と、色彩のコントラスト
写真サファリの記憶は、タイガー柄のジャカードや、アイボリーのベルベットで表現したアストラカン、黒と白のシルクオーガンザによる羽根の装飾へと変換された。
カラーパレットの中心となったのは、スパイスを思わせる赤だ。ヒマラヤンレッド、レンガ色、ボルドーといった複数の色調が、コレクションに熱と力強さをもたらしている。
そこへ金と銀が光を添え、黒が素材同士の違いを際立たせる。ナチュラルホワイトと黒は、時に混ざり合い、時に陰と陽のように対峙しながら、シャープなコントラストを生み出した。
「さあ、ご乗船を。そして世界の四方から、愛を込めて」
ソルビエが記したこの言葉は、遠い土地への旅立ちを促すと同時に、世界各地の文化や記憶を、一つの香りのように纏うことへの誘いでもある。

フランク・ソルビエ2026-27年秋冬オートクチュールコレクションの全ルックは、以下のギャラリーから。
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