7月7日(現地時間)、オランダ発のクチュールメゾン「RVDK ロナルド ヴァン デル ケンプ(RVDK Ronald van der Kemp)」は、パリ・オートクチュールウィークで最新コレクション「Wardrobe 24: Vive l’Art」を発表した。
アップサイクル・オートクチュールの先駆者として知られるロナルド・ヴァン・デル・ケンプは、コレクションを「シーズン」ではなく「ワードローブ」と呼ぶ。衣服を一定期間で消費される商品ではなく、着る人の人生とともに時間を重ね、受け継がれていく存在として捉えているからだ。
今回のショーノートには、コレクションの核となる言葉が短い詩のように並んだ。
「それは表面から始まり、その下へと続いていく。美。リアルさ。作る。壊す。変える。幸福な偶然」
用いられたのは、ラグジュアリー産業から生まれた余剰素材、救い出された皮革、忘れられていた装飾品、そして先端技術。メゾンが掲げた「昨日の過剰を、明日のクチュールへ」という言葉どおり、すでに存在する素材に新たな価値と物語を与えるコレクションとなった。


Courtesy of RVDK Ronald van der Kemp
Summary
- 「Wardrobe 24: Vive l’Art」を7月7日、パリ・クチュールウィークで発表
- 余剰生地や救済されたレザー、デッドストックの装飾を用い、「昨日の過剰」を「明日のクチュール」へ再構築
- 鮮やかな色彩、衝突するプリント、メタリック、デニム、テーラリングを自由にミックス
- メンズとウィメンズの境界を越え、現実のワードローブのような多様性を提示
- リサイクルフィラメントを3Dプリントした「RVDK アートジュエリー」が今季デビュー
素材から始まるクチュール
RVDKにとって、サステナビリティはデザインを制限する条件ではない。むしろ、創造性を引き出す出発点だ。
先に完成形を思い描き、それに合う素材を探すのではなく、余剰の生地や救済されたレザー、デッドストックのビーズなど、すでに存在するものと向き合う。素材が持つ色、質感、傷、歴史を読み取りながら、そこからシルエットを導き出していく。
そのため、一着一着には均一な完成度とは異なる、人の手と時間の痕跡が残る。わずかな不揃いや予期しなかった組み合わせも、修正すべき欠点ではなく、「幸福な偶然」としてデザインに取り込まれた。
赤、コバルトブルー、グリーン、ゴールドが交差するロングコートには、異なる質感と柄がパッチワークのように重なり、彫刻的なショルダーや大きく傾いたハットが強い存在感を放った。一方で、ブラックのテーラードドレスには色鮮やかな立体刺繍を肩まわりに配し、抑制されたシルエットのなかに装飾のエネルギーを凝縮している。
鮮やかなフローラルドレス、断片的な素材を重ねたアシンメトリーのイブニングドレス、メタリックのスカート、救済されたレザーを編み込んだようなシアードレス。素材の出自は異なりながらも、すべてがひとつのワードローブとして自然に共存していた。



美とリアルさのあいだ
今季のコレクションを束ねたのは、ひとつのシルエットや明確な時代設定ではない。異なるスタイルを自由に混ぜ合わせる、その姿勢自体だった。
端正なタキシードテーラリングの隣に、ダメージデニムやスリップドレス、ランジェリーを思わせる透け感、ボディコンシャスなミニドレスが並ぶ。クラシックとストリート、イブニングとデイウェア、装飾性と実用性のあいだに序列は設けられていない。
肩を鋭く張り出したブラックジャケットにはシンプルなミディスカートを合わせ、別のルックでは、構築的なジャケットにゆったりとしたペイントデニムとチェック柄のタイを組み合わせた。コバルトブルーの大きなリボンを思わせるコートには、使い込まれたデニムが添えられている。
メンズもまた、同じ自由さで登場した。ゴールドのパンツに白シャツとボウタイを合わせたルックや、マーブル調のドレープシャツに織りの粗いパンツ、柔らかなゴールドバッグを携えたスタイルは、フォーマルと即興性を軽やかに行き来する。
そこに描かれたのは、理想化された人物像ではなく、実際の人々が日々行うスタイリングの延長だった。古いものと新しいもの、華やかなものと無骨なものを混ぜ、重ね、着る人自身の感覚で成立させる。RVDKが提示したのは、完璧に整えられた一着ではなく、組み合わせによって生まれるエレガンスである。



RVDK アートジュエリーがデビュー
今季、メゾンは新たに「RVDK アートジュエリー」を発表した。
ヘアジュエリー、モビール、動く彫刻、ブローチ、ピンからなるコレクションは、「コラージュされた身につけるアート」として構想されたもの。リサイクルフィラメントを用いて3Dプリントしたパーツに、余ったビーズや拾い集めたオブジェを組み合わせ、彩色とラッカー仕上げを施している。
小さな彫刻のような装飾は、結い上げた髪に留められ、ジャケットのラペルやドレスの胸元に飾られた。歩くたびに揺れ、光を受けて表情を変えるその姿は、アクセサリーというより、身体とともに動く小さなアート作品に近い。
廃棄されるはずだった素材も、作り手の視点と技術によって新しい価値を獲得する。RVDK アートジュエリーは、今回のコレクションが掲げる思想を、最も直接的な形で体現していた。


昨日の過剰を、明日のクチュールへ
壮大な演出や圧倒的なスケールが注目されがちなクチュールウィークにおいて、RVDKが示したのは、異なる種類のラグジュアリーだった。
「Wardrobe 24: Vive l’Art」は、サステナビリティについて語るためのコレクションではない。すでに存在する素材だけでも、豊かで華やか、そして現代的なクチュールを生み出せることを、服そのもので証明してみせた。
仕上がりは意図的に磨き込まれすぎず、素材同士の偶然の出会いや、わずかな不均衡もそのまま残されている。それでも、あるいは、だからこそ、服には均質な新品にはない生命力が宿った。
衣服を、次々に置き換えられる「シーズン」ではなく、時間とともに育つ「ワードローブ」として捉えること。ロナルド・ヴァン・デル・ケンプが問いかけるのは、クチュールをどれだけ新しく見せられるかではない。
すでに存在するもののなかに、私たちはどれほど多くの美を見落としているのか。
「Wardrobe 24: Vive l’Art」は、その問いへの鮮やかで、自由な回答となった。

RVDK ロナルド・ヴァン・デル・ケンプ「Wardrobe 24: Vive l’Art」の全ルックは、以下のギャラリーから。
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